弟妹の働きを認めて、自分がすべき農業の勉強やSNSの発信を始めると、仕事が楽しくなり目標も持てるようになったという鎮目由美子さんからお聞きしたお話です。
家族で果樹農園経営
鎮目(しずめ)由美子さん
山梨県在住
実母への間違った思い込み
――学んだきっかけと最初の気づきをお聞かせください
果樹農園を経営する専業農家の長男である主人と結婚して16年になります。義理の両親と同居して、4人の子供にも恵まれました。もともと体育大学出身で体を動かすことが好きでしたので、農業は初めてでしたが、みんなで仕事をして一緒にご飯を食べる生活は、学生時代の部活のようで、何の抵抗もなく受け入れることができました。
農繁期になると、近くに住む義妹が手伝いにくるのですが、義妹は仕事の進め方や手際が良く、私よりも頼りにされていると感じて、義妹とは距離を置くようになりました。このままではいけないと、ネットで知ったフラクタル心理学のミニ講座を受けて、2018年に家族関係コースを受講しました。
講座のワークで幼い頃を思い出すと、夜勤のある看護師だった母は、家事に追われて全く笑顔がなく、私は「母親というものはいつも機嫌良く笑っているべき」と思ったことを話しました。講師からは共感されることなく、「あなたが少しでも家事を手伝っていれば、お母さんは休む余裕があったのではないですか」と諭されたのです。
フラクタル心理学では「360度自分」「まわりは自分の投影」と考えるので、母がそう見えたなら、実は私自身も機嫌が悪く、偉そうにしていたのだと知りました。さらに誘導瞑想を進めると、「自分の好きなことしかせず、何も言わなくても周りが察してくれて、望み通りにしてくれるもの」と思っていたために、母がしっかり働き、家事も完璧にしてくれていたのだとわかりました。
私は今でも家事を負担に思うことがあるのですが、講師から「家事はあなたの仕事です。手が足りなかったら子供に家事を仕事として与えなさい」と言われました。親に偉そうにし見下してきた思考を改めるため、「両親は上だ」とアファメーション*をしながら、「仕事と家事を全力でやる」「親にやって欲しいと思うことを自分でやる」と自分に言い聞かせました。
人を見下すのをやめる
――義理の妹さんへの思いは何が原因かわかりましたか?
私には年子の弟がいて、両親と祖父母の6人家族で育ちました。講座で幼少期の弟との良かった思い出を聞かれて、「弟は部屋がありませんでしたが、私にはありました」と話すと、弟の悪い環境がいい思い出なのは、弟を見下しているからだと指摘されました。高校くらいから弟と口をきいていませんが、それぞれ結婚しているので、問題視していなかったことを話すと、講師から「講座中に弟となんらかの接点を持つ」という課題を出されました。
弟と電話で話をすると、強い口調で上から見下されているように感じました。講師からは「弟さんは家族を養い、仕事で部下を何人も指導して、責任の重い立場で、エネルギーをしっかり出して働いているから、あなたが感じたのはエネルギーギャップです」と言われて、下と思っていた弟が、実際は上の立場にいたことに気づいたのです。
そこで、一色先生のYouTube「誘導瞑想の小部屋」で、人を見下すことを止める修正文を聞きました。講師から「弟がいて良かったことがたくさんあるはずですから書きなさい」と言われて、男の子が好きな漫画やゲーム、遊びを知ることができて、主人と話が合うし、母が夜勤の時に寂しくなかったなど、思い出しながら書きだしました。
弟よりも能力が高いと勘違いし、負けたくなくて距離を置くというパターンが、義妹に対しても相似形で現れていたと気づき、二人を下に見るのをやめて実力を認めようと思いました。義妹は果樹園を手伝うことで両親を助けていることにも気づき、義妹が働きに来てくれることを感謝できるようになりました。
子供たちが家事を手伝い、リーダーシップを発揮
――ご家族に何か変化はありましたか?
家事も子供の仕事にして、長女をリーダーに食器洗いと洗濯物たたみを4人でローテーションさせました。部活で遅くなったときなど、長女から「うちは厳しい」と言われると、「ご飯を食べ終わるまで待ってて、食器をきれいに洗ってあげて、さぁ寝なさいと寝かせてあげるのと、どっちの方が自分のためになる?」と聞くと、納得してやるようになりました。主人も「自分でやらせた方が絶対にいい。あとで苦労するのは自分だから」と賛成してくれて、私は家事が楽になり、時間にも余裕ができました。
子育てはこれまで順調でしたが、私が講座で学び続けると、別の高校に通っている高二の長女と高一の次女はそれぞれ卓球部の部長に、中一の長男は学園祭の実行委員に、小六の次男も児童会長になるなど、学校でリーダー的な役割をするようになりました。講師から「子供の姿は未来の自分の姿ですよ」と言われ、積極的な子供たちを見て励まされました。
農業の勉強会やSNSの発信をはじめる
――仕事への取り組み方は変わりましたか?
中級で、夢を見つけるには「断捨離をする、体力をつける、目の前のことを120%の力でやる」と学びました。断捨離はできていますし、現在45歳ですが、毎年、富士山マラソンに出場して完走するくらい体力もありますが、仕事では目標もなく受け身でした。
そこで、同じように桃やシャインマスカットを作っている地元の農家の友達と交流会や農業の勉強会をしたり、一緒に朝市に出店してシャインマスカットを売ったりしました。主人から引き継いだホームページもリニューアルして、ネット販売に対応できるように変えました。講座の受講仲間から勧められて、インスタやフェイスブックなどSNSで作業風景を伝える発信も始めました。
受講仲間から購入の予約を受けて、良いものを送りたいと、今までになくプレッシャーを感じるようにもなりました。義理の両親は果物の宅配を始めて35年になりますが、ほとんどリピーターさんなので、毎年大きなプレッシャーを感じながら発送してきたのだと思うと、義理の両親を尊敬する気持ちも格段に深まりました。
実父は会社の専務としてたくさんの部下を抱えて働いてきましたし、義父は77歳ですが生涯現役を宣言しています。2人とも仕事が好きで、仕事に情熱を傾けてきました。講師から「あなたにもそのエッセンスがありますよ」と言われて励みになり、実家に帰った時には、実父と仕事の話ができるようにもなりました。
目標を持って仕事を楽しめる自分に
農業の勉強を進めていくと、毎日どんな作業をして、どの畑を収穫するのかなど、主人や義理の父が常に最善を考えて仕事をしていることに気づきました。講師から「ご主人は責任が大きい」「両親や夫はあなたよりも上の存在」と言われたことが納得できるようになりました。
主人とも農業の話ができるようになり、私も「おいしい果物を作りたい」と思うと、仕事が格段に楽しくなって、パフォーマンスも上がりました。仕事量は圧倒的に増えましたが、疲れも感じず、毎日がすごく軽やかです。
フラクタル心理学を学んでの一番の収穫は、「目標を持って仕事を楽しめる自分」に出会えたことです。学生時代はスポーツで、毎日目標に向かって取り組んでいました。目標を持って生きることは、私が目指す生き方だったのです。
今後は、一緒に働ける人材を増やして、「ここで働くと楽しい、成長できる」と感じてもらえるように、知識や技術をアップさせたいと思っています。このような気持ちでパートナーと一緒に仕事ができるようになり、感謝と共に心からの喜びと幸せを感じています。
2024年1月発行TAWプレスに掲載
文:(株) Mamu&Co. 藤田理香子