事業の浮き沈みも他人の反応も、自分の思考に原因があるとわかり、自分を変えて仕事も人も動かせるようになったという假屋泰之さんからお聞きしたお話です。
会社経営 フラクタル心理カウンセラー
假屋泰之さん
大阪府 在住
周りは優秀だと思うようになると、スタッフが能力を発揮し始めました
思考のなかのバグが見つかる
28歳で不動産屋を始めて、不動産、建設、設計事務所からなるグループ会社へと成長させました。売上げも30億円に達する勢いでしたが、2008年のリーマンショックで、逆に30億円の負債を抱えて倒産寸前まで追い込まれ、数々の修羅場をくぐって会社を再建させました。ある程度返済の目途が立ってきたときに、何が原因でどん底に陥ることになったのか? 理由を模索するうちに、インターネットで「思考が現実化する。100%例外なく!」というキャッチフレーズを見つけ、答えが見つかるかもしれないと思い、フラクタル心理学を学び始めました。
初級講座で子どものころの話になったので、私は三人兄弟の真ん中で、年子の兄が嫌いだったと話しました。講師から「お兄さんのことが大好きなんですね」と返されて、講師の意図がわからないまま、子どものころの思いを探るために誘導瞑想を受けました。
イメージのなかでは、年子の兄と私は仲が良く、私は兄のあとを付いて回っていました。兄が小学1年生になり、「友だちと遊びに行くから付いてくるな」と、追い返されたときに、突き放されたと感じて、兄のことを嫌いになったのでした。
兄と喧嘩をすると、いつも母から「お兄ちゃんに逆らうな、あんたは勝てないんだから」と諭されたので、「自分は弱くて価値がない。弱いと愛されない」と思い込んだようです。それで、小さい頃から強くなろうと空手を習い、プロレスラーになりたいと身体を鍛えました。また、子どもの私には、目立つ人や普通でない人が「強い人」と映ったのでしょう。普通ではない変わったことをしたくて、小学生のときは1年中半袖半ズボンで過ごし、小・中学校の運動会では応援団長をしました。
私の家は、父が公務員で、母がスーパーのパートで働く、絵に描いたような普通の家庭でしたので、変わったことをすると、「普通で良いのよ、普通で」と、母からよく言われました。私にしてみれば、普通は弱いことと同じなので、母の言葉は一切耳に入らず、父のことも雇われている普通の人だから、たいしたことがないと見ていました。
逆にその思い込みのお陰で、強くなりたい、人と違うことをしようと、ゼロから事業を興して社長になり、努力して会社を大きくしてこられたのでしょう。思ったことは実現すると思ってきましたし、引き寄せる力も強いと自負していました。
ところが、人生の階段を上り詰め、「弱くない自分、価値のある自分」が達成された途端に、誤作動が起きたのです。いきなり反転して多額の負債を負い、「弱くて価値のない自分」を味わうことになったのです。
自分だけでは気づけなかった深層意識の思いが、私の思考回路のなかで誤作動を起こしたバグでした。思いも寄らないことに呆然としていると、講師から、「自分で穴を掘ってそこに落ちて、そこからまた這い上がって、『俺ってすごいだろ』というよりも、価値を積み上げて大きなものを築き上げた方が偉いですよね」と言われました。反論の余地はありませんでした。
そこで、「お兄ちゃんには絶対勝てないんだからと言われていたよね。それは、お兄ちゃんが年上だからであって、あなたを弱いと言ったわけじゃないよ。お母さんは、兄弟仲良く、お兄ちゃんのことを敬って欲しいから、そういう怒り方をしただけだよ」という修正文を教わり、毎日、自分の深層意識に言い聞かせたのです。
意識を変えると周囲の人やスタッフが変わる
仕事で、住宅建設のために近隣住民から道路変更の同意が必要となったときのことです。「住民のなかにすごく頑固なおじいさんがいて、何度お願いに上がっても同意してくれない」と講師に相談すると、「年が1つでも上であれば、その分長く生きているのだから、それだけで尊敬に値します」「そこが修正できたらおじいさんは変わりますよ」と言われました。
まさか変わるはずがないと思いつつ、「目上の人を尊敬しようね」という修正文を読み始めると、1週間ほどで、そのおじいさんが満面の笑みで同意の判をくれたのです。自分の思い込みが100%自分の世界に投影されていると確信した出来事でした。目上の人や取引先であっても、自分のほうが仕事ができると、横柄な口の利き方をしていたことを深く反省しました。
講師に、「社員がなかなか育たない」と愚痴を漏らしたときも、「社員さんや周りの人をどう思っていますか、バカだと思っていませんか?」と指摘されてうろたえました。会社のスタッフはたくさんいますが、仕事はできないし、能力もないし、私以外はみんなバカだと思っていたからです。ここでも自分の思いが現実化していたのです。
「周りの人は素晴らしい才能を持っていて、仕事ができる人に囲まれて私は幸せだ」と修正すると、今まで頼りないと思っていたスタッフがしっかりしてくるなど、それぞれが能力を発揮し始め、新しく優秀な人材も採用することができました。
父を尊敬できるようになる
上級講座で父の話題になり、父は県の住宅供給公社で働いていたことを思い出すと、父の仕事も私と同じ街づくりで、私は父の性質のエッセンスを受け継いでいたと気づきました。自分で事業をしたかったと父が言っていたことも思い出し、子どもたちを育て上げるのに、やりたいことを我慢して、リスクを避けて公務員として働いてくれたのだと、父に対して感謝の思いが湧きました。
今では、「弱くて価値がない」という深層意識の思い込みは、私のなかから一掃されたようです。日々、起こることに注意しながら、思考を修正するフィードバックの習慣もでき、望む方向に安定的に事業を進めています。もし、あの思い込みをそのままにして事業を続けていたら、また同じことを繰り返していたかと思うと、怖ろしくて身震いがします。
フラクタル心理学では、続けてカウンセラー養成講座も受けて、思考の現実化の勉強を続けています。人間関係に悩む人や、願望実現をしたい人に向けて、学びの場を提供したり、さらに世の中の人たちが喜ぶような事業も立ち上げていきたいと思っています。
■假屋泰之さんが経営する
株式会社 エムジェイファクトリー
2021年3月発行TAWプレスに掲載
文:(株) Mamu&Co. 藤田理香子