第一線のネイリストからネイリストを育てるサロンオーナーに転身!

ネイリストの講師として全国で指導後に、フラクタル心理学を学んで、ネイルサロンのオーナーとなり、スタッフ教育に力を入れる高井智美さんからお聞きしたお話です。

ネイルサロン経営
高井智美さん
大阪府 在住

スタッフの能力を引き出し、プロフェッショナルチームへ

父への思いの変化

私のネイルサロンにお客さまとして来られていた方がフラクタル心理学の講師で、お話をするうちにフラクタル心理学に興味を持ち、パートナーシップを良好にさせたい思いから、家族関係コースを学び始めました。

講座では、パートナーとの問題は父親との関係に根源があると学びました。私は2人の弟がいる3人姉弟の長女で、「お姉ちゃんの言う通りや」と、両親も私の意見を尊重してくれるのをいいことに、父を下に見て、思春期に入る頃には、完全に無視するようになっていました。

私が小学校の上級生になるまで、母は専業主婦だったと講座で話すと、「それまでお父さんは一人で稼いで家族を養っていたんですね」「お給料は全部家族に入れて、休むことなく誠実に働いていたのですね」と講師から指摘されました。

くたくたになって仕事から帰った父に、「汚いからお父さんの靴下と一緒に洗わないで」と、偉そうに言っていた光景が頭をよぎりました。お給料をすべて家に入れて、家族から邪険にされても文句一つ言わなかった父・・・、「同じ立場だったらそれができますか」と講師に問われ、「そんなことできない」と思うと、間髪入れずに「お父さんに謝りなさい」と講師から言われました。

すぐに父に電話をしてこれまでのことを謝ると、涙が溢れました。初めて父と二人で食事に行き、「その先生、ホンマに良い先生やな」と、照れくさそうに笑う父を見て、父の深い優しさを知り、父との関係を見直すことができたのです。

路面店を持ち、問題を解決していく

中級講座では、講師から「いろいろな選択肢があると思うけれど、パートナーを作るか、ビジネスで人を雇ってチームを作るかしたほうがいい」とアドバイスされました。一人暮らしで、一人で仕事をして、一人で完結する生き方では成長がないというのです。私も34歳になり、変化を起こしたいと思っていたので、お店を持つことにしました。

マンションでのネイルサロンを閉めて路面店を開き、スタッフも雇いました。スタッフはこの仕事が未経験でしたが、自分で答えを見つけられるように仕向けていると、子育てをしているような気持ちになり、育ててくれた母へ敬意や感謝の思いが湧きました。私の持ち味のチャレンジ精神やコミュニケーション力、アート的なセンスは、自分一人で身につけたように思っていましたが、両親が引き出してくれたのだと思うと、傲慢な気持ちが薄れていきました。

スタッフがジェルの道具を置きっ放しで帰ったときのことです。会社の所有物は大切に扱うようにと、すぐにでもLINEを送ろうかと思いましたが、感情的になってはいけないと思いとどまり、出退勤のルールをつくって貼り出しました。フラクタル心理学ではインナーチャイルド*の感情で行動せず、大人の理性で考えるようにと学びましたが、それを体感できた一件でした。また、「すべての問題の根源は、自分の深層意識(潜在意識)の傲慢・怠慢・無知」とも学び、何か起きたら、その原因は自分が経営者として怠慢なことにある、と捉えて改善していくことで、経営者としての能力が鍛えられていきました。

講師を辞めて経営に専念する

以前、「ネイリストは天職ですね」と言われたときに、才能は活かせても、天職とは思えませんでした。私は美大卒なので、絵は得意でした。その後、一般企業に就職して営業職で良い成績を上げました。30歳でネイリストになると、それらの経験が活かされたのか、「ネイル界の新星」と呼ばれて、ネイリスト養成学校の講師として、全国を飛び回って指導するようになりました。当時、インスタグラムも始まりの頃でしたが、フォロワー数も2万人ほどいました。

店を構えてからは徐々に活動を控えて、昨年で講師を引退しました。店を構えてみると、私がしたいのは人が活躍できるような場づくりだと気づきました。ネイリストとして輝くことは、絵もコミュニケーションも得意な私にとって、難なくできることで、そこには、新たな能力を引き出して成長する喜びや、心の満足感はなかったのです。

フラクタル心理学では、「相手を成長させることが愛」と学びましたが、私が第一線でネイリストとして店に立っていると、スタッフも私に頼ってなかなか自立しませんでした。忙しいからと、スタッフの能力を引き出すこともせずに、私が現場のトップで居続けることは、経営者として怠慢だと思えて、一昨年の秋には、自分がお客さまを担当するのをやめて、経営に専念することにしました。

スタッフの能力を引き出しプロにする

スタッフを見ていると、みんな固有の能力を箱の中に仕舞い込んでいるようで、「その箱を開けて、あなたのキラキラした才能を見せてよ」と問いかけたくなりました。私は自分でその箱を開けてきたからこそ、みんなの箱を開ける手助けが得意だと思えました。

スタッフの教育に本腰を入れるようになると、次第に彼女たちも自分の能力に気づくようになりました。みんなが納得して自分らしく仕事に取り組み、成果がでるのを見ていると、なんとも言えない喜びと、やり甲斐を感じました。そうしてそれぞれの箱が開かれ、才能が発揮されれば、売上げはさらに伸びるに違いありません。

昨年はスタッフも3人に増え、コロナ渦での自粛期間も、国の助成金の補償を受けて、教育期間として十分に活用できました。今はすべき教育も終わり、プロフェッショナルチームとして実践段階で、これからの展開が楽しみなところです。

一昨年の春にパートナーと呼べる男性との出会いがあり、一年後には一緒に住み始めました。父との関係が変わると、父のように穏やかで優しい人と出会えました。

そして、フラクタル心理学をビジネスに活用するようになると、問題と思えることもプラスに変換できるようになり、創造性が広がる経営者というポジションは、私にとって天職と思えるようになりました。この先もさらに、教育や経営のジャンルで新たな道を切り拓いていきたいと思っています。

*チャイルド(インナーチャイルド):深層意識(潜在意識)のなかの成長しきれていない未熟な一部

■高井智美さんのネイルサロン
grace nail factory

2021年3月発行TAWプレスに掲載
文:(株) Mamu&Co. 藤田理香子