深層意識を変え、仕事の定義を、「試練を乗り越えるもの」から「楽しくやって成果を出すもの」と変えたら、仕事への取り組み方が変わり、スムーズに、より大きな成果が出せるようになったという野崎大輔さんからお聞きしたお話です。
組織人材開発コンサルタント 野崎大輔さん 東京都
未来の先取りでパフォーマンスが上がりました。
■ストレスを作り出す思考から抜け出す
12年前に社会保険労務士事務所を開設し、現在は社労士の枠を超えて、組織風土の醸成と人材育成のコンサルタント、労使紛争予防解決のコンサルタントという2つの役割から中小企業の支援を行っています。フラクタル心理学は友人から話を聞き、自分に必要な考え方だと思い、2年前に受講し始めました。
当時は仕事一辺倒の生活で、年に2、3回はストレスから声が出なくなったり、鬱状態で仕事が手につかなくなることもありました。労働問題で問題社員と相対する際には、下手をすると依頼先の会社が訴えられるリスクも伴うため、自分が思っている以上にストレスがかかっていたのかもしれません。
ストレスの原因を探るために、講座で私の深層意識を見ていくと、「成功には苦労がつきもの」という思いが強くあるとわかりました。昔の学園ドラマで、気合いと根性で主人公が苦境から這い上がる姿を見て、「試練は美徳」と思ってきたのです。
フラクタル心理学では「思考が現実化する」として、無意識とはいえ、苦境ですら自分で作り出したことと考えます。そして、私のように、苦境を乗り切ることで達成感を得るのを「穴掘り思考」というのです。
さらに、締め切りまで放っておいて、ギリギリに仕上げて「やっぱり自分は凄い」と誇るパターンも私にはあり、そうやって達成感を得るのを「ギリギリ思考」というのだと聞きました。講師から「淡々とやって成果を出すのが一番いいと思いませんか」と問いかけられて、「その通りだ」と納得しました。
自分で掘った穴から必死に這い上がり、わざわざ上げたハードルを越えて「凄い」と喜んでいたのかと思うと、心底、可笑しくなりました。「仕事は苦しいもの、辛いもの」から「仕事は楽しくやって成果を出すもの」に変え、「穴を掘って達成感を得る」のではなく「上に積み上げて達成感を得る」に切り替えると決めました。
意識が変わると、以前なら深刻になっていた問題でも、感情のコントロールが上手くできるようになり、「滅多にないケースですから、楽しんでやりましょう」とお客様にも言えるほど、リラックスして取り組めるように変わったのです。
■海外旅行で未来の自分を先取りする
また、ストレスが高じると「これじゃダメだ」と自分を攻撃することもありましたが、これも穴を掘るパターンを助長するだけなので、もっと自分を大切にすることに決めました。自分をもてなすつもりで、土日を挟んで3泊5日でほぼ毎月、東南アジアのリゾート地に海外旅行にも行くことにしました。
「思考は貯まることで、それが現実化する」と講座で聞いていたので、できるだけ5つ星のホテルに泊まるようにしました。裕福な宿泊客たちに将来の自分を重ねて、成功した人ならどのような仕事の仕方や休日の過ごし方をするだろうかと、ホテルのプールサイドでイメージしながら、未来の自分を先取りしました。仕事のメールは一切見ずに、本を読み、思考の整理をしながら新たに戦略を考えて、心身をリセットする期間にしたのです。最近は東南アジアでホテル住まいをしていて仕事で日本に来ているという感覚になってきました。
毎月海外に行くようになると、仕事でのパフォーマンスは上がり、帰国後に不思議と仕事の依頼も増えました。仕事とプライベートのバランスも取れて、いいサイクルで廻るようになったのです。
■動物病院業界でNo.1を目指す!
仕事では動物病院からの依頼も受けていました。この業界は離職率が高く、院長はスタッフの育成と組織作りに悩みを抱えていましたが、解決できる専門家もいないので、「いないなら自分が第一人者になろう」と思っていました。中級講座のワーク、「未来の5ヵ年計画」では、「動物病院業界のコンサルタントとして1番になる」と明確に書きました。
これによって動物病院のクライアントが増えるのは当然といえましたが、他業界での人脈も広がっていったのには驚きました。困りごとの解決だけでなく、もっと業績を伸ばしたいといった相談も多くなり、組織の変化の速度が以前よりも早まりました。私が未来へのフォーカスを強めたことで、クライアントにも前向きな思考が多く見られるようになったのです。
■父親への認識が変わる
講座のなかで、「深層意識では父親は仕事を象徴する存在であり、父親を見下していては、仕事は上手くいかない」と言われていましたが、なかなか思いを変えることはできませんでした。
父は中卒で公務員になり、消防署に勤務していました。学がないし、読めない漢字が多いことから私は父をバカにし、母からパチンコばかりしているとグチを聞かされれば、ダメな奴と父を見下してきたのです。
上級講座のワークで父のことを「最終的に消防署の本署勤務になって定年したが、上にへつらって本署に行けたのだろう」と話すと、受講生から「それだけでは、本署には行けませんよね」と言われました。改めて父のことを考えてみると、年収も1千万円を超え、長男の私を含めて男3人兄弟をみな大学まで行かせていました。今までまったく見えていなかったことが見えてきて、父のことを「たいしたものだ」と素直に思えたのです。父に対する認識はひっくり返り、長年の否定的な思いが解消されました。
上級講座を修了後、いつになく大晦日に実家に帰り、元旦に父と二人で初詣に行きました。42年間で初めてのことで、こんな日が来るとは思ってもみませんでした。
■クライアントの業績も伸びる
私がスタッフの人材育成を行った動物病院では、必ず定着率が向上するのでスタッフ数も増加し、スタッフが4倍に増えたり、採用に苦戦していた動物病院が、一気に4人採用できたりと嬉しい報告を受けるようになりました。
ある動物病院では、院長の深層意識に怠慢の要素を見つけ、コンサルティングするなかでそれを修正したところ、院長から中堅社員が積極的になったと喜ばれました。衝撃だったのはスタッフが全員辞めてしまった動物病院の院長に、深層意識の話をすると、問題は自分にあったと理解してくれ、深層意識の修正を行った後、良い人材を2人採用できたと喜びのメールがきたことです。
フラクタル心理学を学んだことで、従来のコンサルティングに深層意識の修正も加えて、私なりのコンサルティング手法を確立することができてきました。
また、これまで行動戦略、労働問題対応、ハラスメントに関して、3冊の書籍を執筆してきましたが、昨年は突然依頼がきて『士業プロフェッショナル』(ぎょうけい新聞社刊)という書籍で「動物病院の組織人材開発に特化したコンサルティング会社」として紹介されることになりました。これも認知度を上げることを思考した結果だと思っています。
人材育成に関する講演も多数行ってきましたが、保育園の団体からの依頼で140名の主任研修を行うなど、100名規模の講演依頼が増えてきました。
講座で、将来の姿を語り合う「未来トーク」を学び、私も友人と理想の将来像について、既に達成したという前提で発表し合う機会を毎月つくっています。3、4年のうちに動物病院業界で1番になることを目標にしています。小さい分野であれ、1番はブランドになりますから、それを足がかりとして他業界にも広げていくつもりです。組織人材開発のプロフェッショナルとして、多くの人に良い影響を与えられる存在となり、やりがいを持って働く意欲をもつ人が増えることを願っています。
2020年1月発行TAWプレスに掲載