深層意識(潜在意識)にある病気につながる思考に気づき、前向きに生きることを決心すると、心身ともに元気になって仕事に復帰でき、息子さんも医学部に合格したという佐野サヤカさんからお聞きしたお話です。
歯科医師 フラクタル心理カウンセラー
佐野サヤカさん
東京都在住
大病を患い養生中に受講する
――学んだきっかけと最初の気づきをお聞かせください
大学病院で知り合った夫と結婚して、義父が院長を務めていた歯科医院で共に働き始めました。義父が亡くなってからは、夫が歯科医院を継いで院長になり、夫と共に医院を盛り立てながら、歯科医師として元気に働いていました。娘と息子の二人の子供にも恵まれ、幸せな毎日を過ごしていたのですが、8年前に突然100万人に1.5人しかならない希少ガンと診断され、手術と再発を繰り返し、家で療養生活を送ることになったのです。再発を避けたくて、気功をはじめ精神や心理の世界を探求していく中で、ウェブ検索でフラクタル心理学を知ったのが2年前のことです。
心理学に興味があったので入門講座を受講すると、初めに、私の現実は私が作りだしたもので、「思考は現実化する」というフラクタル心理学の大前提を教わりました。振り返ってみると、夜寝るときに「このまま目覚めなくてもいい」と思ったこともありましたし、手術の執刀医にも「何かあっても蘇生しないでいいです」と告げるほど、それくらい生きる気力がなかったのです。病気になって辛かったけれど、心の底では「仕事しないのは幸せだ、何もしなくてもみんなから大事にされる」と、病気であることで得られる幸せを感じてもいたので、私の思いが病気を作り出したというところが腑に落ちたのです。
親とわかり合えない寂しさ
子供の頃、父は出張で不在が多く、薬局を経営していた母は朝8時から夜8時までお店を開けていて、休みはお正月の三が日しかなく、「甘えられなかった」という親に対する恨みがましい思いを、幼いころからずっと持っていたと気づきました。
歯学部を卒業し、その後、東京の歯科医院に嫁ぐことになったときに、母から結婚を反対されました。母は私を地元の人と結婚させて、自分の薬局の近くで開業させようと思っていたようです。父と姉も母の味方で、結局、家族から祝福されないまま結婚して、実家とはぎくしゃくした関係が続きました。子供が生まれて関係が修復するも、またすぐにトラブルになるので、生きているうちにわかり合えることはないだろうと諦めていました。
それでも、母に認めてほしくて、母と同じように働けばきっと母も喜ぶはずと思い、忙しく駆けずり回っていました。同居する義母のサポートもあって、仕事と家庭を両立できる理想的な環境にあり、家族やスタッフに囲まれて、ニコニコ笑顔で周りからは幸せそうに見えても、なぜかいつも寂しくて仕方がありませんでした。それは実の親と分かり合えない悲しみであり、その寂しさや悲しみは心の奥深くに沈んだまま消えることがなかったのです。
両親から愛されていたとわかり劇的に体調が良くなる
――親御さんへの思いは病気と何か関係がありましたか?
講座の誘導瞑想のワークで、小さい頃の出来事をイメージしていくと、私は姉と二人姉妹で家族のなかでは一番下なのにとても威張っていて、母に対しても「お母さんは間違ってる。私の方が正しい」と思っているとわかりました。「ヒエラルキーを守りなさい」と講師から諭されて、「自分が偉いをやめる。お母さんの言うことを聞く。私は一番下」とアファメーション*で自分自身に言い聞かせるようにしました。
それから、講座で「病気にはメリットがある」と聞いたときには、私にとって病気の最大のメリットとは何だろうと考えました。ここでも親のことが思い浮かび、それは、弱り切った私の姿を見せて、ずっと私を放っておいたことを親が悔いることであり、親を振り向かせることなのではないかと思いいたりました。そのために病気になったのなら、親との関係を修復できれば、この病気を克服できるかもしれないと思いました。
続く初級講座で「愛の定義」を学ぶと、そこで「お金も愛」であり、親が子供にお金をかけるのは、そこに愛があるからだと学びました。これまで親を恨んで見下してきましたが、両親は休む間もなく働いて、私を歯科大に行かせてくれました。莫大なお金をかけてくれたのですから、私はとても愛されていたのだと、この時やっと気づくことができたのです。これだけ両親がしてくれたのだから、自分の身体を粗末にしてはいけないとも思いました。
講師からは「ご両親が働いていたということは、本当は親がかまってくれなくて寂しかったわけではなく、好き勝手に家でのんびりしていたかったのではないですか」と指摘されて、私は家でゴロゴロしているのが好きなので、まったくその通りだと自分の思い違いにも気づきました。結婚を反対されたのも、わがままな私が、一人東京の婚家でやっていけるのか心配してのことだったのです。
親には愛があったと気づき、もう「病気でいる必要がない」とわかった次の日、まるで憑き物が落ちたかのように、劇的に体調が改善しました。
母に電話してこれまでのことを謝ると、母は何も気にしていないと言って、体調が良くなったことをとても喜んでくれました。仕事は休んでいたので、家で家事をするようになっていましたが、以前仕事をしていたときには、義母が子供の世話や家事をサポートしてくれていたにもかかわらず、感謝の気持ちが足りずに、無礼な振る舞いをしていたことに気がつき義母にも謝りました。
働き者だった両親と祖母 病気になりやすい思考に気づく
――ご家族への思いが変わったわけですね?
上級講座では実家の家族に対する思いも変わりました。母は病院の薬剤師を退職した後、最終的には2軒の薬局の経営者になったほどパワフルな人でしたし、父は作業員から働いて取締役にまでなった人でした。華道の先生だった祖母も50歳くらいの時に茶道の免状も取り、お弟子さんが100人もいた人気の先生でした。うちの家族はみんな働き者だったのでした。
姉とは疎遠でしたが、姉が地元で母の2軒の薬局を切り盛りしてくれているからこそ、私は東京で自由にできていると気づいて、姉への思いも変わりました。声が聞きたくなってすぐに電話すると、姉は今までにないような穏やかな声で、「またサヤカと一緒に旅行に行きたいよ」と言ってくれました。私が思いを変えると、相手の思いも変わっていることに改めて驚かされたのです。
――その後、体調はいかがでしたか?
家族への思いは変わりましたが、まだ体調は万全ではなく、仕事には復帰していませんでした。一色先生のセッションを受けると、子供の頃に病気になりやすい思考を作ったのかもしれないと言われました。子供の頃の思い出では、児童会の役員をしていたがあまりやりたくなかったこと、水泳教室に通って地区優勝もしたけれど、練習では2千から3千メートル泳がなければならず、それがきつくてよく吐いていたことを話しました。
一色先生に誘導瞑想をしていただき、嫌々やっていたから、お腹が痛くなったんだ、自分から積極的に取り組めば、自分が成長するし、能力にもなるんだ、と自ら気づくことができました。そして「課された仕事は積極的に取り組めば、あなたの能力になるんだよ。成長することはいいことだよ。身体の具合も良くなるよ」という修正文を毎日読みました。
これまで「仕事しすぎると病気になる」「ストレスは身体に悪い」と思い、「嫌だな」「不安だな」と感情が動くと、お腹の具合が悪くなっていたのですが、それもみな成長を拒んで抵抗しているからでした。
一色先生から「病気を作れたのだから良くもできます」と諭されて、「自分の身体は自分で作れる。自分でコントロールできる。しっかりしろ」という修正文を録音して聞きながら眠りました。
そうこうするうちに、漢方薬など良い薬にも出会って体調も安定してきました。「自分が世界を作っているのだから、自分次第で世界は変わる」「絶対に身体を良くする」と決意して、体調改善に良いと思えることをやっていきました。
息子が医学部に合格 子供たちも自分のために勉強するように
――お子さんたちにも何か変化がありましたか?
私がフラクタルを学び始めたときに、息子は浪人生でした。高校を卒業したときの成績は下から1/3ぐらい、偏差値も50くらいでしたので、何とかどこかに受かってくれればと思っていたら、受験直前、息子から見せられた受験票が全部医学部だったことに驚いて、「あなたの成績で医学部なんて受かるわけないじゃない!」と頭ごなしに言い放ち、他学部も受けさせたのです。ところが蓋を開けてみると医学部に何校か受かっていて、いつの間にそんなに勉強ができるようになっていたのかと、息子の変化が信じられませんでした。
そのとき、私はフラクタル心理学を意欲的に学んでいましたが、まだ仕事にも復帰していませんでしたから、何か行動したというより、「自分の成長のためにやるべきことを前向きにやる」ということが腑に落ちて、私の心境がすごく変わったことが息子に影響したのでしょう。
その後、息子は入学して初めてのテストで1番を取り、実習レポートでも満点を取り、満点は大学史上初と評されたそうです。娘は歯学部に行っていましたが、学年でトップ10の成績を取るなど、子供たちは本当に自分のために勉強するようになったのです。
ケアする人の心と身体の癒し講座の講師を目指す
発病前に50キロあった体重が38キロまで落ちて、手術後もなかなか増えませんでしたが、フラクタル心理学を勉強し始めてから、ありがたいことにガンの再発もなく、体重も増えだして43キロまで回復しました。この秋からは仕事にも復帰して、少しずつですがこれまで携わってきた小児矯正を引き続き受け持つようになりました。
考えてみると、私は悩みを抱えた患者さんや不遇なお子さんに同情や共感をし過ぎて、疲れ切ってしまうことがよくありました。「ケアする人の心と身体の癒し講座」では医療従事者こそ感情のコントロールが大切と学びました。医療の現場は共感力の高い女性に支えられているともいえます。心の仕組みを知り、正しい共感ができるようになれば、家庭と仕事を両立しながら女性が元気よく働けるようになるのではないかと思います。
祖母は今の私とほぼ同じ50歳を過ぎてからお茶の先生になったので、私もまだまだやれる、もっと頑張ろうと思い、フラクタル心理学の「ケアする人の心と身体の癒し講座」の講師の資格も取りました。将来的には、フラクタル心理学をベースに歯科界に特化した講座が開けるようになりたいと思っています。
また、私が携わってきた小児矯正では、子供の口周りの癖が問題視されています。口周りのさまざまな癖が、歯並びを悪くし、矯正治療後の後戻りの原因にもなり、また、全身の健康にも問題を生じやすくします。子供たちに口周りの筋肉の正しい使い方などを教えても、意識するときにはできるのですが、無意識のときには癖が出てしまうのです。
無意識とは深層意識ですから、フラクタル心理学の手法を用いて子供たちの間違った癖を治すことができたらどんなに素晴らしいことだろうと思います。
この研究に取り組んで結果を出し、いずれどこかで発表できたらと思っています。フラクタル心理学で学んできたことを、歯科医療に活かして、社会貢献できればとても嬉しく思います。
*アファメーション:肯定的な自分への宣言
2023年1月発行TAWプレスに掲載
文:(株) Mamu&Co. 藤田理香子