老舗茶舗を改装して現代の日本茶スタイルを提供。地元特産の「銘仙」をモチーフにした商品を開発して仲間と共に街おこしを担う

このままでは時代に取り残されるという焦燥感の中、意識を内側に向けてすべきことに集中すると、新たな道が開かれたという茂木宏美さんからお聞きしたお話です。

日本茶専門店四代目女将
茂木宏美さん
群馬県在住

空きスペースを改装してサロン活動を始める

――学んだきっかけと最初の変化をお聞かせください

30代半ばで仕事を辞めて、群馬県伊勢崎市の明治時代から続く老舗の日本茶専門店に嫁ぎました。2年ほど専業主婦をした後に、家業を手伝うようになりましたが、事務所も商店街にある本店も昔のやり方のままで、お客さまの年齢層も高く、昭和の空気が漂っていました。主人と私の代になったら、お客さまはいなくなっているのではないかと焦る気持ちが募りましたが、今声を上げても何もできないと思い、今後の助けになればと専門学校でマーケティングを学びました。

その後、本店2階の空きスペースを活用する案を、義理の両親にプレゼンして了解を得ると、前職のインテリア業界での感性を活かして、「洋の住まいに馴染む日本茶スタイルを提案する場」として、講座やイベントを開催できるサロンにリニューアルさせました。ところが、同時期に主人が四代目として代替わりして、私も経営に携わることになると、サロン活動は休止状態となってしまいました。

迷いや不安からサロンの活動に一歩が踏み出せない自分に苛立ちを感じ、何とかしたい思いからフラクタル心理学の講座を受講し始めました。講師にサロンのことで悩んでいると打ち明けると、「誰も来なくてもいいから、とにかくお茶会をすると決めて募集してみなさい」と背中を押されました。さっそくブログで「桜のお茶会」の募集をかけると、申し込みがあり、3年ぶりにサロンをスタートすることができました。

2ヵ月後には日本茶の講師の依頼が来て、「和のアフタヌーンティー」と題して外部で講座を開き、その後も商工会議所主催で日本茶講座を開催したりと、サロン活動を継続する流れができてきました。

フラクタル心理学も現象学、カウンセラー養成講座まで一気に受講して、学び始めから半年後にはコーディネーターとして講師をお招きし、サロンの場所を活用して家族関係コース、美容健康コース、入門、初級講座を開催しました。

スタッフも入れ替わり、夢だった本店の改装もできて

――仕事への取り組み方は変わりましたか?

社内改革をしていく中で、フラクタル心理学の考えを活用しました。スタッフの動きが遅くて気になった時に、「現実は自分の思考の結果」という内容を思い出して、自分の深層意識に向けて「サッサと働け」とパンチ法*をすると、注意してもいないのにスタッフの動きが良くなったのです。

また、中堅社員の一人がいつも不満そうな顔をしているのが気になり、他のスタッフに比べて待遇が悪いせいかと思い、役職につけてお給料を上げたことを講師に話すと、「あなたが上司なのに部下が上司のようになっていますね」と指摘されました。

部下は自分の投影で、不機嫌そうにして注意を引き、構ってもらおうとするのは、他でもない私自身のチャイルド*だと言うのです。「部下の機嫌を取るのは止めよう」と心に強く思うと、社内での揉め事から、あっという間にその部下が辞めて、コミュニケーション能力がとても高い人を新たに採用することになったのです。「360度自分の投影」で、自分の深層意識が変わると人も替わり、周りは自分の意識を映し出す鏡なのだと実感しました。

――ご自身の中で大きく変化したことは何でしょうか?

講座受講後は、年に3回ほど定期的にフラクタル心理学の個人セッションを受けるようにしました。よく講師から「覚悟が足りない」と言われていたのですが、私が会社のことで文句が言えるのは、先代である義理の両親へ甘えがあるからで、「『見て! 褒めて!』という思いを手放して、自分が社長になったつもりで取り組みなさい」とアドバイスされました。言われてみれば、先代に認められようとして、頑張っていたところがありました。自分自身に意識を戻して、自分がすべきことに集中しようと決心し、社長になったつもりで3年分の事業計画をまとめました。 

私に責任を取る覚悟ができたからでしょうか、長年の夢が叶って、2年前には築40年近く経った本店の改装が実現しました。日本茶の伝統文化の継承の意味も込めて「三世代が集う店」というコンセプトで、お茶の販売だけではなくお茶の淹れ方教室を開催したり、抹茶ドリンクをテイクアウト販売したりと、お茶に親しみ、楽しめる場として、本店に新たな息吹を吹き込むことができました。改装後の初年度から利益率が大幅に改善して、再び、事業を軌道に乗せることができ、主人からは「あなたの功績は大きい。ありがとう」と感謝されました。

銘仙茶の商品化で街おこしもできて

――そのほか目標や達成したことなどをお聞かせください

中級講座の将来の目標を決めるワークで、「街づくりで社会貢献をしたい」と書きましたが、ほかの地方の商店街と同じく、伊勢崎市も中心街が寂れてしまい、何かできることはないかと思ってきました。

それと共に、16年前に伊勢崎市に嫁いだ時に、地元織物の「銘仙」が目に留まり、そのカラフルで斬新な絵柄に感銘を受けて、「いつか銘仙の柄を使ったお茶を商品化したい」という想いも温めてきて、事業計画にもいれていました。

まず「銘仙茶」を商品化しようと動き出すと、「銘仙」で地域を活性化したいという人たちに次々と出会い、銘仙プロジェクトが立ち上がりました。各社が商品化を進め、私も生活シーンに合わせてセレクトしたティーバッグを銘仙柄のパッケージに入れて、「ライフスタイルに寄り添う銘仙茶」として商品化しました。

銘仙を使った各社の商品のお披露目と記者会見を行うと、地元新聞を始め日経新聞などの新聞社や、地元テレビ局やNHKでも取り上げられて、私はラジオにも出演して銘仙への思いを語りました。昨年は伊勢崎市に「まちなか賑わい創出事業」が発足して、街中の活性化のための取り組みとして、銘仙プロジェクトも市と連携することになりました。

社長である主人も商店会の理事長に立候補して、今春、就任しました。私自身の意識の変化は、身近な人の変化や地域社会の変化にも連鎖していくことを身を持って知りました。

――ほかにも変化したことはありますか?

副業でプロフィール写真の写真家としても活動するようになりました。以前から写真を学んできましたが、フラクタル心理学で知り合った婚活カウンセラーの方からの依頼とアドバイスにより、ファッションアドバイスとセットにして婚活写真を撮ったところ、お見合いの申し込みが多数あってすぐに結婚が決まったと喜ばれ、そこから、撮影の依頼が来るようになったのです。「やってみよう」と臆せずに挑戦できるのは、フラクタル心理学で自分の思いや、自分がどうしたいかを大切にすることを学んだお陰だと思います。

長い伝統としきたりを自分が変えていいものかわからず、周りが気になり、身動きが取れなくなっていました。フラクタル心理学を学び始めると、自分の中に自信が生まれ、自ら責任を取る覚悟ができました。事業の軌道修正を行い、店舗を改装して現代の生活に合う日本茶を提案し、多くの人と繋がって地域活性化の動きにも参加することができました。新たな方向へ導いてくれたフラクタル心理学に心から感謝しています。

2023年7月発行TAWプレスに掲載
文:(株) Mamu&Co. 藤田理香子