
長年抱いてきた両親への思い違いに気づき、前向きに仕事に取り組むようになると、クリニックの規模も大きくなったという池村和歌子さんからお聞きしたお話です。
歯科クリニック院長
池村和歌子さん
東京都在住
両親への思い違いに気づいて
――学んだきっかけと最初の気づきをお聞かせください
都内のビジネス街に予防歯科専門のクリニックを開業して5年。思うように患者数が伸びず、歯科衛生士や歯科助手を雇っても長続きしないなど、将来に不安を抱えていた頃、ビジネスセミナーで知り合った方の紹介で、2019年からフラクタル心理学を学び始めました。
講座で「人間関係やビジネスで問題があるなら、親との関係を見直すといい」と聞いて、親子関係を振り返りました。私は両親と9歳上の兄、2歳下の妹との5人家族で育ちましたが、小学5年生のある日、突然父から私立中学への受験を言い渡され、学習塾に通うことを強いられました。週末も模擬テストに追われて、父に叱られながら勉強しました。何の前触れもなく受験戦争に巻き込まれた自分を被害者のように感じて、父に対して恨みがましい思いをずっと持っていました
個人カウンセリングを受けて「毎晩、父に叱られながら勉強する羽目になった」と言うと、講師から「いいお父さまですね。普通の父親は家に帰ってきて、『疲れた~』と言いながらテレビを見たり、お酒を飲んだりして、子供の勉強なんか見ませんよ」と言われました。
歯科大学に進めたのは、中高一貫校に進学して、一定水準以上の教育を受けられたからで、それは父が勉強を教えてくれ、学習習慣が身についたおかげです。そう頭では理解していましたが、それでも、「あんなやり方は間違っている」という思いは、消えませんでした。
すると、講師から「勉強を見てくれただけでありがたいのに、指導の仕方に注文をつけるとは、なんて傲慢なんでしょう」と諭されました。言われてみれば、父は時間と労力と、高い塾代まで払って、私から疎んじられ、それでもなお、娘を愛するがゆえに、必死に勉強させようとしていたのです。そんな父を思うと、申しわけない気持ちが込み上げて涙があふれました。
――お母さまに対する修正もされましたか?
私が中学3年生になった頃、両親が離婚し、母は私と妹を連れて家を出ました。講座で「母が父から殴られるのを見るのが嫌だった」と話すと、フラクタル心理学では「360度自分」と考えるので、「それはあなたが殴っていたということです」と言われて驚きました。確かに「お姉ちゃんなんだから」と言われて、我慢ばかりさせられたので、そのことで母に不満を抱いていました。
個人カウンセリングを受けた時に、幼い頃、母に「洗濯物を畳んで片づけて」と言われて、「なぜ2歳下の妹には言わず、私にばかりやらせるのか」と反発を感じたことを話しました。すると、「あなたが母親だったら、2歳の子には無理でも、4歳の子ならできると思うでしょう?」と返されて、母にも見当違いな恨みを抱いていたことに気づきました。そして父と母に対して、心の中で何度も謝り続けました。
考え方を軌道修正し、予防歯科の本を上梓して
――その他にも考え方を変えたことはありますか?
個人カウンセリングで、子供の時は小児喘息でよく発作を起こしていたことや、大学生の時に自転車に轢かれて足を骨折したこと、歯科医師になってからバイクに乗っていて、横からタクシーに突っ込まれて歯を折ったことを話すと、被害者意識や注目されたい思いが強く、自ら問題を作ろうとしていると指摘され、「穴掘りをやめろ」とアファメーション*するようにアドバイスされました。
両親は共働きでしたので、私は0歳から保育園に預けられましたが、熱が出たら母が早く迎えに来てくれるのを知って、保育園のトイレで鏡に映った自分の目を見て、「熱出すぞ、熱出すぞ」と念じてわざと熱を出したりしていました。せっかく熱が出ても、母が迎えに来ない日もあり、母のことは大好きだけれど、私のほうを見てくれない母は嫌いだと思ったことがありました。
思えば、私は幼い頃からずっとこんなやり方で周りを動かそうとしていたのです。そういうことはもうやめようと、「お母さんがいなくても自分のことは自分でできるよね。そんなことで、大人の自分が今やりたいことができなくて、欲しいものが得られないのはすごく損だよ。」とチャイルド*に言い聞かせてわからせるようにしました。
また、私は子供を二人産んだ後に、繰り返し流産したので、流産の理由が知りたくて、個人カウンセリングで誘導瞑想を受けました。すると私には「人数が少ない方が機動力があるからいい」という思い込みがあるとわかり、「その考えだとクリニックも大きくなりません。少人数だとできることが少ないから、大人数の方がいいよね」とチャイルドに言うようにアドバイスされて、自分に言い聞かせました。
講座で習ったパンチ法*で、「動け動け」「エネルギーを出せ」とアファメーション*もしました。また、イメージの中で潜在意識に怠けているチャイルドを見つけたら、大人の自分が将軍の姿になって、やることをやるように命令しました。そうして両親への思いや自分の考え方を変えていくと、スタッフが協力的に働いてくれるようになり、スタッフの数も増やすことができたのです。
3年ほど前に患者さんから勧められて、YouTubeで『歯は内臓!チャンネル』として動画配信を始めましたが、動画を見て、削らない治療や歯を大事にする治療方針に共感してくださった方が来院されるようになり、登録者数も今では3万人を超えるまでになりました。
2023年になると、修正も進んできたので、未来誘導をするといいと講師から勧められて、10年後の未来を思い描くことにしました。「予防歯科を日本に広めて、歯科医療の考え方を変えた功績で、天皇陛下から勲章を授与され、着物姿で授賞式に出席しています。いくつもの分院ができ、スタッフも何百人と増えました。今の私があるのは、あなたが頑張ってくれたから、ありがとう」と録音して聞くと、とても勇気づけられました。
さらに、この年には『あなたの歯は、なぜ削られてしまうのか?』(太陽出版)を上梓し、優秀な女医さんをクリニックの一員として迎えることができ、診療室を増設して規模も大きくすることができました。

その結果、今期決算では純利益が一千万円を超えて過去最高の成績となり、売り上げも3月、4月と連続で一千万円を超えて、こちらも過去最高となりました。
将来への展望
――これからの夢などをお聞かせいただけますか?
夫は歯科技工士としてラボを経営していますが、小学生の子供二人の面倒をよく見てくれています。講師から「配偶者は夢を叶えるパートナー」と教わり、仕事に理解を示してくれ、実家の母のことも大切にしてくれる夫は、共に未来を築いていくかけがえのない存在だと、改めて思うようになりました。
私がこれまで取り組んできた予防歯科は、医療費の削減や健康寿命の延伸といった点で、日本の未来にとって大きな意義があると信じています。しかし、その価値を伝え、集客につなげることは容易ではありませんでした。ようやく事業が軌道に乗り始めた今、将来は複数の分院を展開する歯科医療法人の理事長になるという夢も広がりつつあります。
もしフラクタル心理学を学んでいなければ、今もなお、同じような問題が繰り返されていたことでしょう。フラクタル心理学を通して、自分の思い込みに気づき、それを修正することで、本来取り組むべきことに集中できるようになりました。そして視野が広がり、物事を大局的に捉えながら、大きな夢に向かって前進できるようになったのです。この学びを通して、たくさんの気づきをいただけたことに心から感謝いたします。
*チャイルド(インナーチャイルド):潜在意識の中の成長しきれていない未熟な一部
*パンチ法:シャドーボクシングのように言葉を発しながらパンチをする思考の修正法
*アファメーション:自分への肯定的な宣言
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2025年7月発行TAWプレスに掲載
文:(株) Mamu&Co. 藤田理香子